就職氷河期世代がバブル世代をみる現実
就職氷河期世代――1990年代半ばから2000年代初頭にかけて社会に出たこの世代は、バブル崩壊後の厳しい経済状況の中で、まともな正社員の職に就くことさえ困難な時代を生きてきました。希望を抱いて社会に踏み出したものの、待っていたのは採用の縮小、非正規雇用の増加、そして長期的なキャリア形成の困難でした。そんな中で必死に生活を支え、自らの道を切り拓いてきた彼らが、ふと目を向けるのが「バブル世代」と呼ばれる人々です。
バブル世代は、1980年代後半から1990年代初頭の好景気の中で就職を果たし、企業からは「人材確保のためなら何でもする」というような熱意で迎えられた世代です。内定のために高級レストランで接待を受けた話や、入社前からマンション購入の相談をされるなど、今では信じがたいようなエピソードも少なくありません。まさに「売り手市場」の恩恵を最大限に受けた世代と言えるでしょう。
そんなバブル世代が、今では企業の中堅から上層部を占め、多くの意思決定に関与しています。一方で、就職氷河期世代は、非正規雇用から抜け出せないままキャリアを積むことが難しかったり、十分な社会保障を受けられないまま中年期を迎えていたりと、厳しい現実と向き合っています。
このような背景から、就職氷河期世代がバブル世代を見るとき、そこには羨望や悔しさ、あるいは不公平感といった複雑な感情が渦巻いているのが現実です。もちろん、すべてのバブル世代が楽をしてきたわけではありませんし、就職氷河期世代にも成功を収めた人はいます。しかし、世代全体として受けてきた「時代の恩恵と冷遇」の差は、あまりにも大きいのです。
そして今、社会はその溝をどう埋めていくのかが問われています。就職氷河期世代に対する再雇用支援や、非正規から正規雇用への転換支援など、さまざまな施策が打ち出されてはいますが、その多くは限定的で、一度失ったキャリアの積み上げを取り戻すには至っていません。
就職氷河期世代がバブル世代を見つめるその視線の中には、単なる対立意識ではなく、「時代に翻弄された者」としての静かな叫びが込められているのかもしれません。
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